「コトリ!」
モスキーとヤモリが乱暴にドアを開けた。
歌が、やんだ。
目に涙をためたコトリさんはじっとうつむき、微動だにしない。
俺達もつっ立ったまま、両者を見比べるしかなかった。
「コトリ」
今度はヤモリが囁くように言った。
「もうお眠りなさい。大丈夫だから」
ヤモリはコトリさんを労るようにして部屋を出ていった。
無音状態なのに何故か耳がいたい。
「何の歌?」
沈黙を破ったのはガクだった。
「ずいぶん物騒な歌詞だったみたいだけど」
「あれを理解したのか?」
モスキーは厳しく詰め寄る。
ガクは曖昧に否定した。
「訛りが酷くて、あんまり聞き取れなかった。誰かが誰かに殺されたってことはわかったけどね」
「客間に案内するよ。……もう休むといい」
彼はそれだけ言ってから歩き出した。
俺とアイさんが先に部屋に案内された。
ベッドが二つと、見慣れない家具が数点置いてある。
ふかふかの寝具に身を投げ出した。
まだ十時をまわったばかりだというのに、酷く眠い。
アイさんも倒れこんだ。
天井が高い。
頭はぼーっとしていて、そんなしょうもないことがぽつぽつ生まれるばかりだ。
アイさんも疲れているんだろう。
息を吐く音だけがやけに大きく聞こえた。
「ねえ……」
眠そうに、アイさんが俺を呼ぶ。
「あの人たち、何者なんだろう。あの歌の、『殺された』って……」
「まさか」
あいつらは生身の人間だよ。
俺は確信を持ってそう言い切った。
「なんでそう思うの」
「幽霊相手にガクがああいう態度とったこと、ある?」
「……ない、けど。でも新しいタイプなのかも」
「大丈夫だから」
力強く言わなければならなかった。
「大丈夫。みんないるから。だからもう寝よう」
優しい声色でそう付け加えると、アイさんは
「そう、だよね」
といくらか明るく言った。
「ホント、そうやって言ってもらうと大丈夫って気になるから不思議だよね……ありがとう」
俺が男だったら惚れてるかも、なんて言われ、女に生まれたことに改めて後悔した。
モスキーとヤモリが乱暴にドアを開けた。
歌が、やんだ。
目に涙をためたコトリさんはじっとうつむき、微動だにしない。
俺達もつっ立ったまま、両者を見比べるしかなかった。
「コトリ」
今度はヤモリが囁くように言った。
「もうお眠りなさい。大丈夫だから」
ヤモリはコトリさんを労るようにして部屋を出ていった。
無音状態なのに何故か耳がいたい。
「何の歌?」
沈黙を破ったのはガクだった。
「ずいぶん物騒な歌詞だったみたいだけど」
「あれを理解したのか?」
モスキーは厳しく詰め寄る。
ガクは曖昧に否定した。
「訛りが酷くて、あんまり聞き取れなかった。誰かが誰かに殺されたってことはわかったけどね」
「客間に案内するよ。……もう休むといい」
彼はそれだけ言ってから歩き出した。
俺とアイさんが先に部屋に案内された。
ベッドが二つと、見慣れない家具が数点置いてある。
ふかふかの寝具に身を投げ出した。
まだ十時をまわったばかりだというのに、酷く眠い。
アイさんも倒れこんだ。
天井が高い。
頭はぼーっとしていて、そんなしょうもないことがぽつぽつ生まれるばかりだ。
アイさんも疲れているんだろう。
息を吐く音だけがやけに大きく聞こえた。
「ねえ……」
眠そうに、アイさんが俺を呼ぶ。
「あの人たち、何者なんだろう。あの歌の、『殺された』って……」
「まさか」
あいつらは生身の人間だよ。
俺は確信を持ってそう言い切った。
「なんでそう思うの」
「幽霊相手にガクがああいう態度とったこと、ある?」
「……ない、けど。でも新しいタイプなのかも」
「大丈夫だから」
力強く言わなければならなかった。
「大丈夫。みんないるから。だからもう寝よう」
優しい声色でそう付け加えると、アイさんは
「そう、だよね」
といくらか明るく言った。
「ホント、そうやって言ってもらうと大丈夫って気になるから不思議だよね……ありがとう」
俺が男だったら惚れてるかも、なんて言われ、女に生まれたことに改めて後悔した。
