薔薇の眷属

「私はローズを寝かしつけてくるよ」
ローズの手をとり、モスキーも退出した。


俺達4人とコトリさんだけが残された。
「あのローズって子、あんたらの子供なん?」
いつもながら適応の早いニューロンがコトリさんにストレートな質問をぶつける。
ありがとう俺の代わりに聞いてくれて。

とびあがるほど嬉しいことに彼女は思いっきり首を振りまくったのだった。
上気した顔が可愛らしいことこの上ない。
抱きしめたい衝動にかられたが、ここは我慢した。

「さっき歌が聞こえたよ」
ガクが言った。
俺も慌てて付け加える。
「すごく綺麗だった」

すると何故か彼女は哀しそうに目を伏せ、しかし小さく歌を紡ぎだす。

美しい。

懐かしい響きの中にかすかに物哀しさが溢れていた。

同じメロディが繰り返される。
よく聞くとどうやら英語らしい。
不思議な旋律にのせて恐ろしい言葉が聞こえた時、心臓が止まる思いがした。


残酷な、
哀しげな、
祈りのような、
そういう曲だった。

「バラッド……?」
確かそんな名のジャンルだったんじゃないかと思いあたる。
英語圏の民謡だったはずだ。

全部はわからなかったが、誰かが殺された歌みたいだ。
コトリさんは何かを伝えたかったのだろうか?

歌は続く。
俺達はぴくりとも動けなかった。


『殺された、殺された』

奇妙に繰り返される呪いのようなその言葉が耳から離れない。