薔薇の眷属

食堂に案内される。
何故祝宴なのか。
何かめでたいことでもあったのか。

だが震える心の中心にはコトリさんがいた。
俺は驚くほど浮かれていたのだ。

ぞろぞろと無言のまま歩く。
父の実家で行われた葬列を思い出した。

「ニューロン君」
モスキーが突然声をかけた。
話しかけられた本人は汗をかき口を押さえている。
「大丈夫かい?顔色がすぐれない」
「そりゃあんなん見せられたらな」
憎まれ口をきく元気はまだ残っているとわかって少しほっとした。

「何があったんだ?」
ニューロンは首をふってから下を向いておし黙っていた。
かわりにモスキーが困ったように答えてくれる。
「好血症でね」
それだけ言って肩をすくめた。

読んで字のごとく、血を好んで飲んでしまう病のことだ。
「あいつ、血液パックからストローでちゅーちゅー飲んどった…」
「吸血鬼か!」
「かもしれないな」

モスキーは笑っていた。


食堂は思ったより狭かった。
だが当然、庶民の食卓とは格が違う。

モスキーがテーブルのろうそくに火をともしていく。
幻想的な空間が広がっていった。

「さあ、座って」
いち早く席についたガクが俺の疑問を聞いてくれた。
「祝宴ってなんのこと?」
「君たちが来てくれたからさ」