薔薇の眷属

「おや、コトリ。今から呼びに行こうかと思っていたんですよ」
声の主にコトリは満面の笑みでこたえた。

ヤモリがいた。
彼の背後には小さな女の子もいる。

「おや」
一緒だったんですね、と言われ、俺はああと短く呟いた。

「コトリ、ローズ。こちらはお客様です。珍しいでしょう?」
「ローズっていうのか、その子は」
「ええ」

小さな女の子は、瞬きもせず俺を凝視していた。この子の目玉がビイドロだと言われても俺は疑わなかったろう。
「お邪魔してるよ、お嬢さん」

誰の子供だろう。
まさかあのモスキーとコトリさんの?

ヤモリと少し雑談した。
何を話したかはあまり覚えていない。大した話ではなかったはずだ。
そうこうしているうちに、青い顔をしたアイさんが戻ってきた。
俺は単に怖がっているんだろうとしか思わなかった。
コトリさんと話したかったし、今更帰るとも言えなかった。

5人で広間に向かう。
食事を持ってくるというヤモリと途中で別れた。

「ああ、ローズ、コトリ」
モスキーが嬉しそうに二人の名を呼んだ。
「食堂に行こう。今日は祝宴だ」

やはり妙なことになっていた。
アイさんはずっと青い顔をしてうつむいていた。