薔薇の眷属

ヤモリはどこに連れていくつもりなのだろう、何故かいつものように忍びこむよりも不気味な感じがしていた。
「無粋な訪問者とはいえ、せっかくのお客様です。彼らもお喜びになりましょう」

重いドアを開ける音がした。
暗くてよくわからないが、俺達は広間に通されたようだ。

「モスキー、お客様をお連れしましたよ」
「客?」
低いが繊細な声だ。
「家の前をうろちょろしてらっしゃいましたので。今から食事にしますね」
ヤモリは皮肉を言ってからこの家には不釣り合いなスーパーの袋を提げて出ていった。


この男が家の主なのか。
テーブルの上のろうそくが照らし出したのは異様に長い銀髪と、浅黒い肌を持った男だった。


「客が来るなど何年ぶりかな」
にこやかな様子に俺は安堵で胸をなでおろす。
「まあ座って座って」

モスキーと呼ばれた男は別に怒っている風ではなく、むしろ歓迎してくれていた。
妙な風貌ではあった。古臭い布切れをまとっている。
ローブ、というのだろうか。ロールプレイングゲームでお馴染の、アレだ。

見回せば、年代ものの鎧や、やたらと大きな時計などがたちならんでいる。
この館の中だけ、時間が止まったようだった。