薔薇の眷属

もちろん全員その気で来ていたので異論はなかった。
問題はどうやって中に入るかだ。
血を吸うという呪いの牙が外敵を阻む。
一家惨殺の悲劇に付随して生まれた都市伝説だろうが、そんな話がなくとも茨を越えるのは難しいと思う。
「正面開いとらんの?」
ニューロンも空模様を心配していた。
どんなに晴れていても、突然バケツをひっくり返したような土砂降りになるのはままあることだった。そういう土地だ。
濡れ鼠になるのはごめんだ。
俺もどこからか潜りこめないか周辺を探したが、出入り出来そうな唯一の鉄の扉はがんとして動かない。
そのうちにとうとう冷たい雫が頭上から降ってきた。

「車にもどろう!車!」
俺達は大急ぎでいったん車に戻り、作戦会議をはじめた。

「裏口とかあらへんの」
「あっても危なくて近寄れないだろ」
裏は切り立った崖になっている。
「どうする?帰る?」
不安になったのかアイさんは弱気だ。
「おかしいよね、廃屋ならもうちょっと劣化しててもよさそうなのに」

ガクの目はキラキラ輝いている。
やはり変態だ。