淳はさくらの誕生日をしっかり覚えていた。


でも何を贈ればいいのかわからなかった。ちょっとしたデート気分を味わいたい気持ちもあり、今日二人でプレゼントを選ぼうと考えていた。


でもいざとなると、何も頭に浮かんでこない…。


当てもなくエスカレーターに乗っていた。


ふとさくらを見ると目が合った…。


慣れない緊張からなのか?


思わず口から、「何か欲しい物ある?」


さくらは最初遠慮がちな言葉を口にしていた。


「じゃあ〜、扇子がいい」


本日2回目の予想外!?

「せ・ん・す」


さくらは淳の顔を見て笑っていた。


きっと淳のおでこには、その言葉がテロップのように、右から左に流れていたに違いない…。


何処に売っているのか?

うろうろする時間もない。

店員に聞いて、その売り場まで行った。


夏の京都。


種類がたくさんあった。

絵柄が様々で個人の好みになるんだろうが、値段でしか差がわからない…。


さくらはぼ〜っとしている俺より先に、次々と扇子を手に取り、広げては扇いでを繰り返していた。


「どんな絵柄がいいの?」

さくらの好みの絵柄を聞いてみた…。


「う〜ん、風が柔らかいのはどれかな〜と思って…」


「???」



淳にはよくわからない答えが返ってきた…。


「この扇子と、この扇子、どっちの風がいい?」


さくらは淳の横顔を扇いでみた…。


「どぉ?風が違うのわかる?」


違いは確かにわかった。