「むぐぐ…」と唸りながら頬を膨らませていると、未だに口元を緩めている征登の手が、絵里の頭の上に乗った。 そして、よしよしと小さな子供をあやすように撫でる。征登の手は、大きくて温かい。 なんだか、心が晴れる気がする。 「ごめんって」 「…しゃーないから許す」 未だ納得はしていないのだけど、さらに頬を膨らませながら絵里は言った。 それにしても、会ってから数分しか経っていないのにこんなにも仲良くなるのだろうか。 2人が談笑しているうち、いつの間にか目指していた建物が目の前にあった。