「……それでも、俺は笑ってないといけないんだ」


なにそれ。

そんな辛そうに笑ってどうすんの?


「偽物の笑顔は、笑ってるって言えない」


事情なんか知らないし、あたしなんか関係ないけど……

紘斗の目を真っ直ぐ見ながら言った。


「……うん。でも俺、そうでもしなきゃ笑えないから」


そう言って、また視線は窓の外。




「じゃあいっぱい泣いて、涙が枯れたら笑えばいい」


今は本当に笑えなくても、いつかきっと心の底から笑えるはず。

だから悲しいときは、ずっとずっと悲しめばいい。


「……ははっ」


スッとあたしに向き直った紘斗。


「じゃあ新山、しばらくハンカチ貸してくれる?」


少しだけど、本来の笑顔が見えた気がした。