「優菜も、いい人見つけなよ。せっかくの高校生活なんだから」

「……いい人なら、見つけてるよ。とっくに」

私の言葉に美奈子は表情を曇らせる。

「もう中本先輩は諦めなよ。彼女いるじゃない、理沙さんという素晴らしい彼女がさ。言わせてもらうけど、絶対に勝てないよ、あの人には」

…美奈子の言う通りだ。
理沙さんには勝てない。

美人で、頭もよくて、でもちょっと天然で可愛くて。
そのくせ気が利いてて、人の気持ちによく気が付く。

…私の、気持ちにも。

「無理な恋愛したって仕方ないんだから、他を見る努力しなよ。ほら、野崎とかさ、いいんじゃないの?」

美奈子が指差す方向を見る。

頭はちょっとアレだけど、バスケ部にいるだけはあって運動神経はいい、人気者の野崎。

申し分がない。

……ない。…ないんだけど。

「…やっぱり…先輩が好きなんだよー……」

泣きそうな気持ちになる。

入学直後、バドミントン部に入って、すぐに一目惚れ。
顔やスタイルだけじゃなくて、性格もいいことが私の恋心をさらに駆り立てて。

先輩と同じ2年の理沙さんと付き合ってるって知ったときには、もう後には戻れなくなっていた。

それから一年が経つのに、未だに私の心は変わらないまま。

練習がきつくて退部してからも可愛がってくれる二人の先輩に迷惑をかけたくなくて、告白なんてできず、けじめもつけられない。

「……私だって…次の恋にいきたいよ…」

ごめん言いすぎた、と俯く美奈子に、怒っていない事を慌てて説明しながら、私は落ち込む気持ちを無理矢理浮き上がらせた。