「あんただけは他の女と違うと思ったんだ。だから…」
そこまで言って、彼は真っ赤になって俯いた。
ああ…そんなところが、憎めないんだ。
わたしはこらえきれず、彼を抱き締めた。
「な、なななにやってんだよっ」
「いいから黙って。聞いて?」
わたしがそう言うと、暴れるのをやめる。
「わたし…戒が好きだよ」
「なっに言って…!」
「だから黙ってってば」
「………」
「好きだよ、戒……先輩じゃなくて、戒が好きなの」
「篠原さん……」
ゆっくりと、唇が重なった……
「ばっかじゃないの!?このベタマンガ!」
「あたしもそれ賛成ー」
「なに先輩から後輩に乗り換えてんのよ!ありえないっ」
「え、そこ?…まあ、あんたは先輩命だもんね」
「あったりまえ!先輩、だってあんなにかっこいいんだよ?」
「はいはい」
昼休み。
姉から借りたマンガを友人の美奈子と読んでいる。
「大体ね、登場人物の名前からして綺麗すぎなんだって!」
「うん、いないよね、こんなイケメンで、素敵な名前のお方」
私の意見にケータイをいじりながら賛同する美奈子。
「…けっ。おデートの約束ですか」
「ええ、そうですわ。本日の放課後に待ち合わせておりますの」
嫌味な私の言葉に咄嗟の切り返し。
さすがは親友、うまい。
むむ、と黙った私の額をつんつんと指で突っついて、笑う。
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