「何考えてんだよ?」
いつの間にか私も自分の世界に浸っていたようで、先生の声に引き戻された
「先生こそ」
「俺はほら、ご両親になんて謝罪すればいいかなーって」
「謝るんですか?」
「そりゃ一応、悪いことしたんだからな」
「悪いこと、ですか」
先生は私の顔を見て、ニヤリと笑う
本当に子供みたいに笑う人だと思う
「あのね、先生は生徒と付き合っちゃいけないの。付き合っちゃったらそれは"悪いこと"」
「でも私は先生が好きです」
「知ってる」
「それも"悪いこと"ですか?」
「それは悪くないよ」
「じゃあ好きな人と付き合うのは"悪いこと"?」
「悪くないよ」
「じゃあ先生と付き合ったことも悪くないです。謝るのはやめてください」
間違いだなんて思いたくない
悪いことだなんて思いたくない
「わかったよ」
先生は子供みたいな笑顔を消して、大人の顔をした
この顔を見るといつも、私の心臓は慌ただしくなる
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