「ねぇ、写真撮ろうよ!」


厳粛な式が終わり、教室では友達と写真を撮ったり最後の雑談に勤しんだり、みんな忙しそうだ


そんな喧騒を自分の席から眺めていた私に、クラスメイトが声をかけてきた


その目はうっすら赤く染まっていて、ああ彼女もあのくだらない儀式で泣いていたのか、と内心嘲笑う


「うん、いいよ」


そんな素振りは見せずに要望に応じれば、彼女と他にも数名のクラスメイトが私を囲む


シャッターが切られ、フラッシュの光を浴びる


写真の中の私はきっと、いつもと同じ作り物の笑みを浮かべているだろう


「ありがとー。ねぇ夏乃ちゃんって、進学だっけ?」

「ううん」

「じゃあ就職?」

「ううん」

「え」


私はまた自分の席に座りながら、彼女の問いに答えた


進学も、就職も、私はしない


「もしかして、就職決まんなかったの?でも結構そうゆう人いるよねー。就職難だし」


彼女はあわててフォローでもしているような口調だ


別にそんなに、気を使う必要なんかないのに


「清水さんは進学だったよね。専門?」

「そう!美容師のね」


片手でハサミを真似たポーズをとる彼女が少し、可愛らしく見えた


夢と希望に満ち溢れたような、そんな笑顔を浮かべるから


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