翌日の午前11時。

三富士銀行大阪支店のすぐそばのカフェに海藤はいた。

昨晩と同じく吉田に変装してコーヒーをすすりながら横山の到着を待っていた。
五分ほどして横山が海藤の目の前のビルから現れた。
前述したように三富士銀行は関西の支店全てを支店の横山に任せているので大阪支店は支店といっても八階建てのビルになっている。
1、2階はATMや窓口のある営業用フロアで、3階以上が関西の支店全てを統括する拠点のようなものになっている。

この形態を考えると横山は支店長でありながら、地位的には社長のようなものだとわかる。

そして彼の手腕もトップクラスという事になる。

そんなわけだから、さすがの海藤も横山の姿を確認した瞬間、フーッと一呼吸して気合いを入れた。

例え関西詐欺師界のトップに君臨しようとも傲らない、それが海藤の伝説たる由縁なのだ。

「おはようございます!昨日はどうも!」

駆け寄ってくる横山よりも先に立ち上がり元気よく海藤は挨拶した。

それに対し横山は笑顔をつくった後、ペコリと会釈をした。

いよいよ海藤の一世一代の大勝負が幕を開けた。