「あれぇ?もしかして三富士銀行の大阪支店長さんですか?」

海藤は横山の顔を覗きこみながら言った。

「え?あっ、はいそうですけど…あなたは?」

横山は不思議そうに答えた。

「私、○○銀行の吉田と言います。」

海藤は偽の名刺を出して言った。

吉田というのは○○銀行の頭取の本名だ。

銀行の頭取クラスになれば例え地方銀行でも顔を知ってる人間など少ない。

しかも横山は最近来たばかりの新顔だから、本当の吉田の顔なんて知ってるはずもなかった。

「あ~!○○銀行の頭取さんですか!」

案の定、横山は信じた。

そこからウソの業務提携の話に持っていくまで長い時間はかからなかった。

新顔の横山でも○○銀行の経営状態を知っていたし、三富士銀行にとっても地方銀行を味方につける事は願ってもいないチャンスだった。

午後12時。
海藤は翌日詳しい案を持っていく事を横山と約束をし、横山を残してその日はバーを出た。