このマスター、見た目はいたって普通の人なのだが、何故か無口で寡黙である。
常連のエイジですらその声を聞いたのは指で数えられる程度だ。

マスターがそんな人物と知っていたのでエイジはそれ以上話し掛けるようなマネはしなかった。

エイジがふと、マスターの後ろの壁掛け時計に目をやった。
時計の針は午後2時を指していた。

「はぁ…。カイト何してんのかなぁ…。」

「そんなに彼が心配なら、電話してみたらいかがですか?」

別にマスター話し掛けたわけでなく、ただの一人言だったのだが、マスターが答えた。

エイジは久しぶりにマスターの声を聞いたので目を真ん丸にした。

すると突然、エイジの電話がなった。

見てみるとカイトからだった。

まるで図ったかのようなタイミングの良さだった。

“ピッ”
「も…」

「もしもし!エイジ?ちゃんと生きとるかぁ?」

電話に出るなり一方的に畳み掛けるように話すカイトにエイジは少々呆れた。

「生きてるよ…。お前相変わらずだなぁ。それよりも大阪はどうだ?なんかわかったか?」

「大阪はええで~♪綺麗なネェちゃんがぎょうさんおるし♪♪
でもまぁ尾藤の事は全然やわ…。収穫ゼロや…。」