翌朝、海藤は駅前のビジネスホテルで目を覚ました。
前日、“cafe カイト”を出た海藤はその日の疲れを癒すために直ぐ様、駅前のビジネスホテルに宿をとったのだった。

起き掛けに日課の一服をして、枕元の時計に目を向けると午前7時30分だった。

「なんや…まだこんな時間か…まだ早いな…」

そう呟いて、もう一眠りしようと目蓋を閉じたが、結局寝れなかった。

仕方なく海藤はテレビでも見て、9時のチェックアウトまで時間を潰す事にした。

テレビをつけると朝のニュース番組が映った。

(アナウンサー)
『次のニュースです。
昨夜未明、渋谷で男性の他殺体が発見されました。
遺留品から殺された男性は三富士銀行(みつふじぎんこう)渋谷支店の店長、金澤 篤(かねさわ あつし)さん。27歳と判明。金澤さんは紐のようなもので首を絞められており………』

「渋谷で殺人事件か…」

別に珍しくもなんともないニュースで、更に被害者とは顔見知りでもなんでもなかったのだが、海藤は何故かその事件が気になった。
しかし、渋谷になんの宛もない海藤にとって事件を追うのは不可能だった。