ザー……………………。

とある日曜日。

その日、東京は記録的な豪雨にみまわれていた。

もちろん渋谷も例外ではない。
いつもなら平日でも人で溢れているこの街もこの日ばかりは人が疎らにいるだけで不気味なくらい静かだ。
そんな渋谷に一軒のカフェがある。店名は“Ｂ・Ｗ”…。

渋谷とは縁がなさそうな物静かなマスターが１人で経営している。

このカフェ、お世辞にも繁盛してるとは言えないほどいつも客がいない。

その日もいるのは１人の高校生だけだった。

高校生の名は鳴瀬 栄司(ナルセ エイジ)。このカフェの常連客だ。

普段はカイトというもう１人の常連客と一緒にいるのだが、その日は独りだった。

というのも、カイトは今、遠出をしていてしばらく渋谷を離れている。

それでも来ているという事はエイジにとってこのカフェは実に落ち着く場所として認識されているのだ。

｢なぁ、マスター。カイトから連絡あった？｣

エイジがホットコーヒーをすすりながら問う。

その質問にマスターは一言も発せず、ただ首を横に２、３度振って答えた。