ほとんど一人で見ていたから、見るのはないのだけれど、そんなことは関係ない。

「ホラーでも見ませんか?」
琴佳が「輪廻」を手にとり聞いてきた。

「いいねぇ。まだ、輪廻みてないんだよね。じゃあこれを見ようか。」
もちろん、これも見ているのだけど、こんなときくらい付く嘘は許してくれるだろう。

それによく言われている吊橋の話し…

人は好きのドキドキと恐怖のドキドキを同じに感じてしまうって話。

まさに、今その瞬間に僕はいる。


二人はカウンターでビデオを借り家へ戻った。

さっそく、二人で隣り合わせてビデオをみる。
ムードを出すために部屋を暗くして鑑賞することになった。
隣には琴佳がいるのに、何も出来ずに、僕は隣で見ている。
ビデオは中盤に差し掛かっていて残りもあと1時間とない。
ビデオどころでない僕はこの時には、ひたすら告白のタイミングを探していた。僕の中の天使と悪魔が戦っている。
(今いわないと一生後悔するよ。ビデオを見終わったら告白したほうがいいよ。勇気を出して、ほら…)と天使が背中を押す。
(今は時期じゃないから、やめときな。どうせ振られるんだから。また今度にしとけって…)