平和に焦がれていた時、私は平和だった。それに気づくとしたら、そう。平和が崩れた時だ。


「先生、私この世に生を受ける者として信じられないほどの吐き気と目眩に襲われているので早退しようと思うんですが先生はどう思われますか?」

「え……あぁ、うん」


学校を早退した理由は一つ。私の傍から離れようとしない、この悪魔の所為だ。


「良いの?優等生が早退なんかして」


後ろから話しかけてくる。つか、なんでこいつ私が優等生だって言われてるの知ってんの?


「あんたの所為でしょ」

「ああ、そうか。僕の所為か」


何、こいつ。阿呆?


「で?」

「え?」

「まだ説明してないことあるでしょ」

「あ、うん。えーとね」


悪魔の話を要約すると、こうだ。

悪魔は当たり前の如く悪魔の世界から来た。だからと言って当たり前の如く魔界だとか、そういう名前はない。強いて言うなら悪魔の世界が「上」、人間の世界が「下」だ。上に生まれたからと言って最初から悪魔である訳ではない。「アクマ」だと認められるには条件があるのだ。


「……で、その条件というのは?」

「下の人に言ったら、悪魔にはなれないよ」