息を整えながらフェンスに寄りかかると、予想通り屋上のドアの前には、男が立っていた。


「何者なの」


さっきまでの事もあってかなり苛々していたのか、喧嘩腰になってしまった。男はそれに怯んだのか、怖ず怖ずと口を開いた。


「だから、悪魔だよ」

「嘘つかないでよ。悪魔なんているわけない」

「それは勝手な妄想だろ。人間に認識できない物質だってたくさんある」


あくまで静かに、淡々と男は語る。


「だからって……、あんたが悪魔だっていう証拠は」

「なら、ここに誰か連れてくれば?認めざるを得なくなると思うよ」


言葉を遮られて、ギリ、と奥歯を噛み締めた。
連れてこなくたって分かる。もう体験したんだから。教室中、私以外誰一人、彼を認識していなかった。それだけで私は分かってしまったんだ。この男が、

人間ではない、と。