すでに家から去っていた…?もしくは、まだ家のどこかに潜んでいるか…。
イナイのは、それはそれで困ることだ。それだけあの男と裸の私、が向かい合っていた時間は長かったのだから。

あー、思い出すだけで恥ずかしい。早いとこあの変態見つけ出して、警察に預かってもらわないと安心できない。


「時子」

「ん?」

「私(の裸体)がYouTubeに晒された時は見なかったことにしてあげてね」

「は?何があったんだし」

「……」


あんな奴に、私の平凡をぶち壊されて。あんな奴に出会わなければ。

ぷつっ。

怒りに悶えていた私の脳を、一瞬にしてその音は冷却した。同時に生じる右目の痛み。たまらず目を瞑る。隣で静かにしていた時子が慌てだした。


「あっ、ごっ、ごめん、楓」

「痛いっ、ちょ、おま、サイアクっ」


どうやら私がトリップしている間、次の授業のノートに落書きしていた時子のシャーペンの芯が運悪く折れ、それが私の右目にクリティカルヒットしたらしい。

あー、もう。最悪なことばっかだ!

ごしごしと目をこすっても痛みは強くなるばかりで、不快感は増すばかり。


「うわー痛そう。大丈夫かな……」


……?

なんだ、今の。

確か、これは。

この声は。


昨日と同じように、恐る恐る、顔を上げた。

予想通り、目の前には。


「アク、マ……」