私の家の隣の空き家だったはずの家には確かに表札が掛かっていた。<よう☆たくと>ってあんたら新婚かよ。


「それじゃ、私はここで」


当たり前に自宅に歩み寄りながら後ろ手に手を振った。しかし返事は返ってこない。怪訝に思いながら後ろを振り返ると、


「かーえでちゃん、あーそーぼー」


なんて笑顔の天使とニコニコしてる悪魔。
……は?


「まさか、家に上がる気じゃないよね」

「そのまさか☆」

「いや」

「って言っても入るんやけどな」


そう言うと天使は強引に私より先にドアノブに手をかけ開けてしまった。


「ちょ、マジでやめ…」

「楓え!!」


突然大声で呼ばれてビクッと体が跳ねる。恐る恐る玄関を覗くと、驚いたような、怒ったような様子の男が天使を指差していた。


「な、何者だこの男共は!」

「……遙、誰?」

「楓の、お兄さん」