「はあ?名前?あるに決まっとるやろ」

「うん。まあ、苗字は適当に決めたんだけどね」


私の机の前で呆れた様子で説明する二人。いや、そんなことより。
背中に刺さる視線が痛すぎて話も耳に入らないんですけど…!
視線の送り主は十中八九二人を狙う女子たちだろう。なに、あの子?私たちの濯兎くんと遙くんに、馴れ馴れしいわね。ちょっと痛めつけてやるわ。なぁんて会話が繰り広げられちゃっているのかしら。やだ、怖い。





「……ぃ。おい、聞いとんのんか?」

「……へ?」


気がつくと時計は16:00を回っていた。どうやら今日一日、ぼんやり過ごしてしまったらしい。仕方ないよね。だって余りにも非日常的すぎて、体力的にも精神的にもヘロヘロなんだ。


「……ぅし帰るか。時子~ってあれ?」


いつも一緒に帰るはずの時子を振り向くと、隣にいるはずの時子はそこにはいなかった。


「公文さんなら、呆れて帰っちゃったよ」

「時子……裏切ったか」

「まあ、時間も時間やしな。楓は部活入っとらんのやろ?」