「これに、サインしてくれる?」


ハッと気づいて悪魔に視線を戻すと、悪魔は一枚の紙切れをこちらに差し出していた。

書類ね……現実的だこと。
もうちょっとこう、呪文とか、ちょっと期待してたのにな私。


「はい。書いたよ」

「ありがとう。じゃあ契約成立だ」


そう言うと悪魔は、すぅ、と息を吸い込んだ。


「『リンク』」


ふわ、と一瞬だけ悪魔の左目にかかった前髪が揺らいだ。私の前髪も風にそよいだように一瞬だけ揺れた。
リンク…?やっぱり呪文があったんだろうか。連結…?

ふと、気づいた。あれ、左目……見える。なんで?契約したら、なくなるんじゃないの?


「なんで左目……」

「え、左目は頂いたよ?リンクしたから」

「リンク?」

「つまりなあ、あんたの左目とこいつの左目が繋がったっちゅうこっちゃ」


中々話が繋がらない私たちに痺れを切らしたのか、天使が割って入ってきた。
よく分かんないけど、左目はいつも通り使えるみたいだ。良かった…。

安堵の溜め息をついた時、悪魔が思い出したように言った。


「そういえば、死なれたらって何?」

「へ?」

「ずっと気になってたんだよね」