「あく、ま……?」

「うん、そうだけど……」

「このバカ!!」


私の言動に、悪魔と天使は驚いたようにぽかん、と口を開けた。私はぐいっ、と涙を乱暴に拭き取ると、悪魔を指差した。


「馬鹿かあんた!いや馬鹿なんだね分かってたよこのバカ!」

「そ、そんなにバカバカ言わなくても……」


悪魔は涙目になってうじうじし始めた。天使は呆れたように溜め息をつく。

私はさっ、と左目の上の髪をかき分けた。


「さっさと契約しなさいよ」

「え……?」


悪魔が意表をつかれたように顔をあげて目を丸くした。私と視線を合わせる。


「良いの……?」

「良いの。死なれたら、なんか私が後味悪いし」


確かめるように見つめてくる目をしっかりと見つめ返す。


「早よせな、気持ち変わってまうかも知れんで?」

「う……うん、それじゃあ」


悪魔は、なんとか納得して懐に手を入れた。
ドキドキ。
左目、あげちゃうよ私。あー、本当に良かったのかなこれで。左目あげて、私は上手くやっていけるんだろうか?なんだこれマリッジブルーみたい。