「……契約?」


あまりに唐突で予想外の言葉に、私はオウム返ししてしまった。


「うん、そう、契約。ぶっちゃけちゃうと、本当は悪魔って下の人に見られたらマズいんだよね」


彼の話はこうだ。悪魔が人に見られた場合、168時間、つまり一週間以内に見られた人間と契約を結ばなければ、悪魔によって消されてしまう。それは恋の叶わなかった人魚姫が泡になることよりも、陰湿で、残酷な……。


「契約すると、あんたは消されずに済む」

「うん」

「でも私はどうなるの?」

「強いて言うなら、僕がいつでも守ってあげるかな?」


はいはい、つまりつきまとわれ続けるわけね。


「それで私がはいそうですかと納得すると思う?」

「難しいかな」


うーん、なんて悩んでいる様子の悪魔に私は溜め息を吐いた。


「で、その契約って具体的にどうやるの」


聞いて損はないかな、と思っただけなのに、何を勘違いしたのか悪魔は


「契約してくれるの!?」


なんてことを口走った。勢い付いてこちらに倒れそうになっているのを静かに手で制して、そうは言ってない、ときっぱり否定した。


「そうか……。うん、契約ってのはね、」


何故かタメる。早く言え!




「君の左目を、僕にくれないか」