「明けましておめでとう。今年もよろしく」

テーブルにのったお節を前に倫がペコッと頭を下げる。

「よろしく」

何て返事をすればいいのかわからなくて無愛想に返す。

お節と言っても二人分の、小さな申し訳程度のお重だ。
まぁ、雰囲気作りってとこか。


倫は大晦日にちょこっと実家に顔を出してすぐにこのマンションに戻ってきた。

友達と新年パーティーをするからと親に言い訳して。

倫の親にはまだ俺の事はバレていないようだけど、騙してるみたいでちょっと後ろめたい。
でも、娘が男と同棲してるなんて知ったら即連れ帰られちまうだろーし…。



「怜?食べよ?」

俺の思いも知らずのんきにお節に箸を伸ばして頬張る。

ま、いいか。
俺は元々実家に帰るつもりもなかったから、一人で正月を過ごすつもりでいたのに倫がいてくれるだけで十分だ。

「じゃーん!」

変なかけ声と共にテーブルにドンと出されたのは、美味しいと有名な日本酒の瓶。