「…それならいいけど」

怜が離れてホッとする反面、近くにいるとドキドキする。

この複雑な気持ちはどうすればいいんだろう。

きっと怜には何て事ない冗談だったとしても心を乱された私には大ごとなんだよ。

やっぱり、こんなモヤモヤした気分を払拭するにはアレしかないよね。

私は弘美を誘って夜の街に繰り出した。






「ちょっとー、飲み過ぎじゃない?」

私の酔いっぷりに迷惑そうな弘美にヒラヒラと手を振る。

「まだまだこれからでしょー!」

「もう帰りのタクシーの中なんですけど」

冷たく言い放った弘美は私をマンション前に放り出すとタクシーと共に行ってしまった。

「もー、愛想のないヤツだなー」

フラフラとエレベーターに乗り込み、浮遊感に少し気分が悪くなったけど何とか大丈夫なまま家の前に立つ。

「あれ?鍵はー?」

カバンを探っても見つからなかったからドアをガンガン拳で叩いた。

「怜ー!」

しばらく待つと不機嫌そうな怜が顔を出す。

「……酔ってんの?」

「ぜーんぜんっ!」

私が怜の横を擦り抜ける時に大きなため息が頬を掠めた。