「真帆ー。お隣にこれ持ってってー」

ソファーで雑誌を捲っていた私にママがキッチンから声をかける。

私は雑誌を置くと、トレーの上に乗ったお鍋とタッパーを眺めた。

「おばさん、出張?」

「そう。これ貴ちゃんと貴パパに」

貴斗のママは会社勤めでなかなかの偉いさん。
急な出張が入るとご飯の用意が出来ないから私のママに頼む。

たまに私が作った物を持って行ったりするけど貴斗もおじさんもちゃんと食べてくれる。

貴斗のいいとこって好き嫌いがないとこだけかもね。

私はトレーを片手に貴斗の家を見上げた。

部屋に電気は点いてるからいるんだろう。

チャイムを押そうとしたらふいに玄関ドアが開いた。