「俺はいいの。俺も相手も本気じゃないんだから。今日一緒にいた奴ってモロ真帆好みじゃん」

貴斗の言う事がわかんない。

自分はよくて私はダメって単なるワガママじゃん。

「貴斗さー、いい加減ちゃんとした付き合いすれば?お互い本気じゃないなんて私には理解出来ない世界だけど」

「真帆ってわかってないなー」

小馬鹿にしたようにクスクス笑う貴斗に何だか腹が立つ。

「あんた達の乱れた考えなんてわかるはずないでしょ。いい加減離さないといつまで経ってもご飯出来ないんだけど」

苛立ちの含んだ視線を向けると貴斗はジーッと私を見ていた。

な…何よ?

間近で見る貴斗を不覚にもカッコいい…と思ってしまった。

ちょっと色素の薄い瞳に小ぶりなスッとした鼻。

少し薄い赤い唇が近づいてきたと思ったら私の頬を一瞬だけかすめて貴斗は離れて行った。

今のは…キス…?

ううん。
離れる時に偶然当たっただけだよ。

気にする事ない。

ドキドキと早く波打つ心臓だって気のせいだ。

気持ちを落ち着かせるために一度ギュッと目を閉じるとご飯作りを再開した。