「ちょっと!近いってば!」

貴斗は私を気にする様子もなくスルッと腰に腕を回す。

こっちは手が汚れているから振り払う事も出来ず肘で押すけど、そんなので貴斗が離れるはずもなく、チャラ男ぶりを発揮する。

「こうしてたら何か新婚さんぽくね?」

「何バカな事言ってんの!」

「真帆さー、今日クレープ食ってたろ?」

肩に顎まで乗せて耳元で呟く。

急な話題転換に一瞬付いていけなかったけどすぐに思い当たった。

佐伯くんといたクレープ屋さんの事。

貴斗に見られてたの気づかなかった。

「だから…何?」

「んー…。何って訳じゃないけど…」

貴斗の吐息が首筋にかかって擽ったい。

「ちょっと離れてくんない?」

「ヤダ」

「はぁ?」

こいつは何を言ってんだ。

「何かさ、真帆が他の奴といたなんて面白くない」

「自分の事は棚に上げてよく言うよね」

自分は日替りで女の子といてるじゃない。