「何だよ?急に」

「トマトのロールキャベツは私が作ってんのよ。ママはコンソメ」

「嘘っ…」

呆然とする貴斗を見るのは気分がよかった。

「いやっ…食ってみるまでは…」

「貴斗、あんたイヤな事言うね。じゃあ目の前で作ってあげるからよく見ときなさいよ」



荷物を持たせて貴斗んちに着いた私はキッチンに向かう。

袋から食材を取り出しボールやお鍋も用意した。

貴斗といえば着替えてからはキッチンに陣取って私の作業を頬杖ついて眺めている。

キャベツを茹で、軽快に包丁を使っていると貴斗の存在をすっかり忘れて調理に熱中していた。

「ふーん。真帆ってこんなに出来るんだ」

背後から覗き込まれて悲鳴を上げそうになった。

「なっ!何よ!急に話しかけないでよ」

包丁持ってたら危ないじゃないっ。

「真帆って俺の事すっかり忘れてるみたい」

拗ねた口振りで私の後ろから離れない。