「結姫様。何か用意するものはございますか?」

床の中で天井の一点を睨むように見つめている結姫に志乃は静かに訊ねた。

結姫が黙って目を閉じたのを見た志乃は結姫の心中を思うとつい痛ましい表情になったが、それを結姫に見られぬよう襖をそっと閉めて奥方の部屋に向かった。







「奥方様。志乃が」

奥方に付いている侍女が志乃の来訪を告げると奥方は人払いを命じた。

部屋には奥方と志乃の二人きり。

「志乃」

志乃は奥方の前で平伏している。

「結の具合はどうか?」

「…今はお休みになっておられます」



「志乃。結は清鷹を好いておるのか」

紆曲する事なく単刀直入に訊ねる奥方を前に志乃は更に低く頭を下げる。