突然の事で逃げ出す事もかなわず、体をビクッとさせた美月を笑って谷川は見下ろした。

「入れば」

呪文をかけられたように美月はドアの内側に入った。

「突っ立ってないで座れよ」

谷川に促されて美月は向かいに椅子を持ってきて腰を下ろした。

谷川は昨日のカップと砂糖の入ったガラス瓶を美月の前に置く。

やっぱりキレイ…。

ガラス瓶を手の中で回しながら光に透かして眺める。

「瀬尾はそれがお気に入りだな」

そんな美月を見て机の中からある物を取り出し手渡した。

「ほら」

「プリズム?」

美月はガラスで出来た小さな三角柱を光に透かしてみた。

「もっと窓際でないと見れないぞ」

谷川は背後にある窓を指差しブラインドを開けた。

美月は光の入る窓際にプリズムを置く。

西日を受けてプリズムからは七色の虹のような光が放射されている。

「わぁっ!」

「何だ?初めて見たのか?」