「今のせんせをみんなが見たら…私だけのせんせじゃなくなっちゃう…」

「よく出来ました」

その顔で笑うなんてズルいよ。

美月は頬を染めて俯いた。

「瀬尾?」

覗き込もうとした谷川の首に美月は抱きつき耳元で囁く。

「眼鏡を外した時は私だけのせんせでいてくれる?」

谷川は美月の背中をギュッと強く抱きしめた。

「ああ。美月だけのだ」

美月の目の前に小指が出される。

美月は満面の笑みを浮かべて自分の小指を絡ませた。

「せんせ、約束だからね」

「誓いのキスでもしようか?」

真っ赤になった美月が首をブンブン振ると谷川は声を殺して笑った。

小指を解こうとしたら美月が谷川の手を握った。

「ん?どした?」

「……ぱ………る…」

「え?」

小さくて聞き取れなかった美月の言葉を聞き返す。

「やっぱ、するっ!」

必要以上の大きな声に何の事やら一瞬わからなかった谷川だったが、美月の意図に気づいた。

「美月、好きだよ」