「俺も好きだよ」

暴れ、もがいていた美月はピタッと動きを止めた。

「嘘つき…。だって笑ったじゃない…」

谷川は美月を離し、椅子をクルリと回転させて対面させた。

「何で俺が眼鏡かけてると思う?」

美月の問いに答えず、谷川は聞く。

「えっ?……みんなが授業に集中しないから…でしょ…?」

「まっ、それもあるけど」

ヌケヌケと言う谷川に美月は思わず笑った。

「俺の素顔は瀬尾にだけ見せたかったから」

「私…?」

意味がわからず首を傾げる。

「瀬尾は図書委員だろ?この部屋の前をよく通ってたし、授業してる時も自然と目がいっちまうし」

谷川は美月と目の高さを合わせるようにしゃがんで照れ臭そうに言った。

「ずっと好きだったよ。生徒に恋するなんて思ってもいなかったけどな。でなきゃドアの隙間から覗いてただけで誰かなんてわかんないよ」

美月の手を取り優しく包む。

「もう、眼鏡取って授業していいか?」

谷川の問いかけに美月は思い切り横に首を振る。

「何でだよ?」

わかってるくせに意地悪だ…。