手を取られ、いつも座っていた谷川の向かいの椅子に連れて行かれる。

「座って」

仕方なく腰を下ろし谷川の後ろ姿を見つめた。

コーヒーを出すと谷川も席に着き眼鏡を外す。

「何でずっと来なかったんだ?」

いきなり核心を突かれて美月は下を向いた。

『せんせを好きになりました』なんて言えるはずもない。

「瀬尾?聞いてんだけど」

美月は拳を握った両手を膝に置いてただ首を振った。

「それじゃわかんないんだけど」

今日のせんせは意地悪だ…。
何でそんな怒ってるみたいに言うの?

「怒ってるの…?」

ようやく口にした美月に追い打ちをかけるように谷川が言った。

「怒ってるよ」

その一言に美月の目から涙がポタポタと落ち拳を濡らす。

それを見た谷川は大きくため息をつき椅子から立ち上がった。