「……桃香です。」
「えっ?」
佐藤が呟いた言葉を聞き返すと
「名前が桃香だからかと…」
自信無さそうに続けた佐藤に、青山は失礼にも桜井に向かって
「え~?だったら芳乃ちゃんは桜井だし…」
「丁重にお断り致しました。」
「即答か!」
赤井は理不尽さを感じながらもツッコミを入れる。
それすらも聞き流し、あくまでも業務に徹底している桜井は、今度は博士に向き直った。
「博士、機能説明をお願い致します。」
「うむ。変身は『ミッション』と言う言葉で行うが、本人とボスの声にしか反応しないようになっている。変身ウォッチには時計、アラーム、防水加工、通信機能が施され…」
「元に戻るにはどうするんですか!?」
いい加減、この空間に嫌気がさしていた赤井が言うと、
「ミッションクリア後に解除する。」
博士も不機嫌に答えた。
「解除するって…まさか…自分の意思では解除出来ないって事ですかっ!?」
「その通り!!」
「報告により、出動手当、残業手当、危険手当等が加算されます。皆さんには個人情報、新製品や開発中の社内機密の流出、横領、社内不倫他、あらゆる悪事を取り締まって頂きます。」
「社内不倫もかよ!?しかし社…」
ボスに言いかけた言葉を視線で睨まれ止められる。
「…ボス。でしたら探偵でも雇われた方が宜しかったのでは?」
「それじゃつまらんだろう?」
「つまらんって…!!」
飄々としたボスがバッサリ言う。
「例えばだ。もしこれが上手くいったら、新製品として売り出せる。君の親父さんも共同出資してくれてるしね。」
「クソッ!親父もグルだったのかっ…!」
赤井が拳を握りしめて悔しそうに呟くと、スクリーンの中にもう一人の仮面の男が現れた。
「ヒーロー、もう喋ってもええんかいな?」
赤井はその姿にギリっと歯を噛み締めた。
「クソ親父!」