祐樹の相棒がラーメン屋脇で大人しく待っていてくれたおかげで、友人宅へは常人並の速度でも10分とかからずに着いた。小さな公園とアパートに挟まれた、ごく普通の二階建て。

「あ、なっちゃん」

その家の前には、既に出迎えがいた。祐樹は嬉しそうに手を振って、自転車を押して歩み寄る。相手は小さく片手を上げた。

「どうしたの、急に呼び出しとか。何か用事?」

「用事ッつーかね。お前どうせあれだろ、鉄とゲーセンにでもいたんだろ」

「え、なんでわかんの?もしかしてなっちゃんエスパー!?エスパー棗!?」

嬉しげに騒ぐ祐樹とは対照的に、呆れ顔で溜め息を脇に吐き捨てて、[三日村棗(ミカムラ・ナツメ)]は自宅に引っ込んでいった。それでも祐樹は、嬉しそうな顔のまま棗について家に入った。