「志音が…死んで、から志音の部屋にわ入った事がなかった。」
どこか遠くを見て話す有志。
「由莉わ、一度だけ入ったけどな。」
「…。」
「…―志音わ髪をいじったりするのが好きだった。だから、ヘアーボックスを持ってた。それを取りに一度だけ入ったらしい。」
「…。」
「…―俺たちですら、入れなかったのに。」
弱々しく笑った有志わ、写真立てに目を向ける。
「…―由莉が起きなくなったって聞いた日、芯と夜琉が帰った後に莉菜と2人で開けたんだ。志音の部屋。」
その写真立てにわ、眩しいぐらいの笑顔をする一つの家族が写っていた。
「…―志音を思いだしたよ。」
「…?」
「…―志音が死んでからわ、志音の事を忘れていた。
志音わ、強い心を持っていたのに。
志音の死に捕らわれて、志音の命をかけて守ったモノを守ると言うことを、忘れかけてた…」
志音の暖かい、強い心を思い出したんだー…
淡く呟いた声わかすれていて、写真立てに写る人物とわまるで違う表情をしていた。

