衛は、バレーボール会場から
千裟の病院へ行っていた。

病院に居るため、携帯の電源を
切っていたので翔からの電話に
出る事は、できなかった。

美果は直ぐそばにある
部活のきゅう舎で
愛馬ジェリーの前いた。

きゅう舎内では、神経過敏な
馬が驚くため携帯の電源を
落とさなければならない。

美果は、紙袋からジェリーの好きな
りんごと人参を出し与えていた。

「ごめんなさいジェリー!

一緒にインターハイに出場

できなくて、今度の人に

可愛がってもらってね」

美果はジェリーの首をなぜながら
自分の顔をジェリーの顔の上に
置いて最後の別れをした。

美果の涙がジェリーの顔に
落ちる。ジェリーは美果の気持ちが
判るのか?舌で美果の涙を
ぬぐった。

美果は、自分の私物をきゅう舎から
持って、衛と出会ったあの坂道を
下って経堂駅に向かった。

駅に着くと、コインロッカーに
私物を入れ荷物の上に
自分の家の住所を書いて置いた。

もうこの荷物をとりに
来ることはない。

切符販売機の前で
箱根までの切符を買って
電車に乗っていた。

窓から外の景色を眺める
ヒョットしたら衛が見えるかも
そんな切ない気持ちで
外を見ていた。

きゅう舎から出ても美果は
携帯の電源を入れなかった。

メールや電話で自殺する
決心が鈍るのが怖かったのだ。

死ぬのは怖い、でも!
これ以上、生き恥をかきたくない。

千裟の病室で衛は
ベッドを背もたれにして
本を読んでいる。

かまって欲しい千裟は
背を向けている衛の背中を
時折突付いてふざけていた。

すると、桃香が病室に
駆け込んで来て

「ごめんね!千裟

衛!少しかりるから!」