千裟は、目をつぶり寝たふりを
している。

その寝姿を見た看護師は
安心したかのように
千裟の病室を立ち去った。

9月の土曜日午前中に
衛を含めたバンドの
メンバー7人が
千裟を見舞いにやって来た。

千裟のベットを囲むように
男7人が立って千裟に
声を掛けた。

まるで美しい雌しべを囲む
おしべの様な姿に見える。

久々に7人に会って嬉しそうな
千裟の表情だ。

「かずちゃん、今日ね!みんなで

君に相談に来たんだ」

リーダーの竹田が口火を切った。

「実は、あのBVCから

正式にオファーがあって、

プロにならないかって」

「でも、前からそんな話有った

でしょう?」

さほど、驚きもない返事だ。

「今度のは違って、BVCが

全面的にバックアップして

テレビやイヴェントなどが企画され

っているんだ。」

「すごい!あのBVCが、そこまで

やってくれるなら、

 成功、間違いないわ」

「でもね、条件があって!」

「条件?」

「学校をやめること」

「えぇ!」

それは、一生を決める決断に
等しい。学校を辞めれば
もう、音楽だけの人生を送らなければ
ならない。

しかし、たった1度の人生、
好きな事をやって
弾けて悔いのない人生を送る手もある。

だが、若いときはいいが
水商売の芸能界不安定な収入、
人気も持続する事は難しい。

年老いた時の
生活の事を考えると不安である。

そして、7人には、
それぞれの夢がある。