その不可思議な理屈に納得
がいかない衛は・・

「どうして?なんですか!」

佐々木はうなずきながら

「君の気持ちは痛く判る

しかし、今の法律では

ドナーの気持ちまで

考えていないんだ」

「それでは、ドナーカードに

遺言として、書いておけば、

どうでしょう?」

「今まで、そんな例はないが

その遺言は尊重すると思うよ」

主治医の佐々木と話を終え
衛はドナー登録をし
ドナーカードを胸にぶら下げた。

このカードが千裟への愛の
大きさを表している。

衛が千裟の為にドナーに
登録したことも知らず

病室では千裟のベッドの上の
テーブルに夕食が置かれていた。

腎臓食のため、塩気がなく
味など何もない.

そんな料理を
千裟は眺めているだけで
食べようとしなかった。

気力がなく、食欲もない。

看護師が病室に入って来て
箸の付いてない夕食をみて

「千裟さん!

少しは食べないと点滴しますよ」

看護師は千裟に食事を勧めた。

仕方なくまずい夕食に箸を
伸ばす。千裟・・

夕食後、看護師が薬を持って
千裟の元へ来た。

「千裟さん、今日から

眠れるお薬出てますから」

千裟は、いつもの数種類の
薬とは別な赤い玉の薬をみて
それが睡眠薬だと気付いた。

千裟はその赤い玉の薬だけ
をそっと、ベットの横に
置いてあるピンクの小物入に
入れた。

薬の力を借り手まで眠りを得る
事に抵抗があったのか?

深夜に看護師の巡回がはじまり
千裟の病室に足音が近付いて来た。