衛は、幼馴染の千裟の心の変化に
気づいた。

「急に元気だった頃が

 懐かしくなってね。もう

あの元気戻らないと思うと」

千裟の瞳が滲んでいる。

衛はそっと千裟の左手を握り

「少しの辛抱で、すぐあの頃の

元気が戻って来るから

もっと!前見て歩こう」

千裟は元気なく、うなずく

「2人でさ、約束したこと

 忘れたの?千裟」

「忘れてないよ。でも

 今の身体では・・」

「医学を信じなよ!」

そう言って千裟を抱きしめた。

衛の腕をほぐす様にして

「ありがとう。いつもやさしいね!

がんばるから私」

衛の愛を深く感じている千裟!
しかし、その言葉には力がなかった。

「もうすぐ夕食の時間だよね。

 じゃ俺、帰るから」

「あした、また来るから」

衛は千裟の病室を出て行くと
主治医の佐々木先生に、また
出会った。

「先生、ドナー登録について

教えて下さい」

「え!縁起の悪い事聞くな!」

「でも、君のような若い人が

 臓器移植に関心を

 持ってくれる事は嬉よ」

「ドナー登録は受付で、

 できるから」

「先生!もし僕が脳死に成ったら

僕の腎臓を千裟にあげて欲しい

のですが?」

「それは、難しいね

誰に移植するかは、

日本臓器ネットワークが決めるから」