両手でも足りない

海斗自身が触れた耳たぶを、あたしは後ろから触れる。少し熱が帯びてて温かかった。

「…海斗?耳真っ赤だけど…?」

あたしが嬉しそうにそう聞けば。


「うるさいっ、触るな!寒いからだよ!」

当たり散らす海斗は照れ隠しでわかりやすかった。


「…で?」

「で?…って何が?」

「それで、あの時。トモ兄とデートじゃなく、俺のこと尾行してたのは認めるわけ?」

「!…あれはその、それは…」

しどろもどろになるのはどうしようもない。


「ん?」

わざとらしい得意げな感じがやたらと憎たらしい。


どうしたって立場は変わらないみたいで、小学生の海斗の気持ちがなんとなくわかる。

確かに悔しいというか…、見返してやりたいとは思うくらいに。


「…認めます。ごめんなさい」

「素直でよろしい!」


でもきっと。あたしはこの偉そうな態度も含めて、海斗のこと好きなんだと思う…。悔しいけど。