両手でも足りない

「わからんのはお前がバカだからだろ。それにややこしくしたのはお前らだし」

「違ーう!紛らわしいからでしょーっ。…もういいよ」

あたしが後ろでほっぺを膨らましても海斗は気づかない。


「そうやってふてくされて、もういいって諦めるのはお前の悪い癖だよな」

って、さすが幼なじみなのかなんなのか。


体育の授業といい、あたしの悪い面ばかり海斗はよくわかっている。


「ま、それだけ見てきたってことだよな」

ちょっと偉そうで得意になるのはいつものこと。


「海斗のは、見なくてもいいとこばっかし目につくんでしょ」

「ほーら、そうやってすぐふてくされる」

言われていることは憎たらしいのに、こんな言い合いですら心地よく感じるから不思議だ。


「…トモ兄には、いっつも勝てなくて。何しても負けてばっかりだった。勉強もスポーツも、力も」