両手でも足りない

なんだか無性に腹が立ってきて、あたしは海斗のお腹にグーで1発食らわす。


「…ムカつくっ!」

「痛って!何すんだよ!?」


好きかもしれないって言ってみたり。

嫌いだのなんだの言ってみたり。


それなのに、やっぱり好きだって。スッキリしたって。


痛くもないくせにさも痛がったフリして見せたり…。


ほんと、ムカつくっ!



「海斗のバカっ!」

「なっ…、お前にバカって言われたくねえよっ!お前の方がバカだろっ」

「海斗の方がバカだもんっ!」


子供みたいにあたしと海斗は声を張り上げて言い争う。

徐々にエスカレートしていって、共に自転車もスピードが上がる。


「俺のどこがだよ!?っとに、今まで俺がどんな思いだったかわかってんのかよ!」

「知らないよそんなのっ!あたしもすっごい悩んだんだから!!人の気もしらないでっ!あの子といた時の海斗なんて、鼻の下伸ばしてデレデレしてたじゃない!」