両手でも足りない

そんなあたしのことはお構いなしに話しを続ける海斗を、恨めしくも思う。


「なんで隣に住んでんだろうとか、なんでお前が女なんだろうとか、言い出したらキリがないことばっかり。顔もみたくないし、嫌いになれるもんならなりたいし、隣に住まなくて済むなら引っ越したいくらいだ。あんなヤツ、嫌いだって何度も言い聞かせてきた」


残酷な言葉たちが耳に突き刺さってきて、しがみついていた腕の力もいつしか添えるだけになっていた。

あたしは海斗のこの無情にも投げつけられる話しを、いつまで聞いてなくてはいけないのだろうか。

「俺はやっぱり…」

「わかった、…もういいよ。もうわかったからっ!」

これ以上聞きたくなくて、そう叫んでいた。


あたしたちの相性の悪さは、生まれた時から始まっていたんだ。

それなのに無理やり取り繕ってみたって、結局は無駄なんだ。

距離を縮めようともがいても、元に戻りたいとあがいても。


生まれた時から決まっていたんだ。


「もう…、聞きたくない…」

帰るまでは、家に着くまでは泣かない。