両手でも足りない

段差の揺れのせいにして、わざとらしく力強くしがみついたりして。

このまま帰ったらいつもと同じで、どんどん海斗に置いてかれてしまうんだ。


無意識に強く目を閉じて、腕に力が入る


「さっきの…、俺、…お前のこと好きかもしれないっ…!って言ったかもしれない!!」

いきなり耳に飛び込んできた海斗の張り上げた声に、あたしはパッチリと目を開けた。


瞳に突き刺さる風よりも、不意に投げつけられた言葉にびっくりする。


…今。

海斗は、なんて言ったの?


あたしの…、聞き間違い?



「今度は…、聞こえたかー!?」

無反応のあたしに海斗がちらっと顔を後ろに向ける。


あたしがその後ろで、首だけを思い切り縦に振ったのがわかったのか、前に向き直ると自転車のスピードが緩まった。